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NGな矯正治療:転医症例Case6


まだ治すところがあるのに、本当に「終わり」ですか?

再治療開始年齢:33歳8か月
当院での動的治療期間:1年6か月
前医での治療:下顎右側第一小臼歯と左側第二小臼歯の合計2本を抜歯し、マルチブラケット(ストレートエッジワイズ)にて治療を行っていた(約2年間)
主訴:次回で矯正治療が終了だと言われたが、でこぼこが残っている。

保定期間:現在も保定中(保定4年経過)※保定期間は通常2年~3年(状態により異なります)
通院回数:3~4週間に1回程度、保定期間は4~6か月に1回程度
治療費の総額の目安(自費):2期治療:総額約67万~92万円 保定観察料:3千円/1回
副作用・リスク:歯根吸収が起こるリスクがあります。矯正治療中は歯磨きしにくい部分ができるため虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。
※記載の治療費は治療当時の金額(税込)です。

でこぼこが残ってしまったのは、患者さんのせい?

写真1・当院初診時の口腔内写真

こちらの写真は、前医で約2年間に渡って矯正治療を受けられた方が、当院に相談に来られた初診時のものです。マルチブラケットでの治療が次回で終わることになっているとのお話でしたが、下の犬歯が後ろ向きにたおれていて、すき間が残り、奥歯にはねじれが残っていました。

以前かかっていた歯科医院で、下顎右側第一小臼歯と左側第二小臼歯の合計2本を抜歯し矯正治療を始め、担当医に治療は終了ですと言われたため、この状態で?と不信に思い、当院に相談に来られました。
治療結果に納得できず、前医に「まだでこぼこが残っている」と伝えたところ「こういう歯の形だから仕方ない」と言われたそうです。また、奥歯には初めから矯正装置がついてなかったそうです。

まだ治すべきところが残っているのに「終わり」だなんて・・・

患者さんは前医で治療を開始する前に受け取った資料(口腔内写真をプリントしたもの)をお持ちでした。

写真2・前医で撮影した治療前の口腔内写真

前医では、矯正治療が約2年、保定期間が約1年の予定と説明を受け、数十万円を支払ったそうです。
説明の時にきいた抜歯部位は、左側第二小臼歯ではなく左側第一小臼歯だったらしく、なぜ抜歯部位が変わったかという説明はなかったとのことです(写真2▲印)。なお、上顎の第一大臼歯は20年程前に抜歯し、そのまま放置していたそうです。

前医での治療前後の歯を見比べてみると(写真1と2)、前歯のでこぼこはほぼなくなったようですが、奥歯はそのままねじれが残っており、下顎犬歯は後ろ向きにたおれています。
歯並びをきれいにしたくて矯正治療を受けたのに、この状態で治療の終わりを宣言され、さらには「きれいにならなかったのはあなたの歯のせい」と言われてしまっては、納得できなくて当然です。

アイウエオ矯正歯科医院での治療

検査

写真3・党員での治療開始時に撮影したせふぁろと口腔内写真

当院で再治療を開始するに当たり、レントゲン撮影(パノラマ、セファロ)、顔面・口腔内写真の撮影、歯型採取等の詳しい検査をおこないました。
患者さんのご要望でお顔の写真はお見せできませんが、写真3のセファログラムからわかるように口元(プロファイル)はバランスがとれています。

上顎第二小臼歯と下顎第一大臼歯は両側ともに交叉咬合(上の歯が下の歯よりも舌側に位置していて、かみ合わせが逆になっている状態)が残っていました(黄色の円で囲んだ部分)。右側は下の犬歯が後ろに倒れており、すき間が残っていました(写真3口腔内写真)。

さらにパノラマレントゲンをみると、右下犬歯が歯根吸収していました(黄色の円で囲んだ部分)。また、下顎両側に親知らずを認めました(矢印部分。右側は埋伏していました)。

歯は一見並んで見えますが、奥歯にねじれが残っています。模型でみると、上奥歯の溝(黒の線)と下奥歯の山(黒の線)のつながりが乱れている(きれいなアーチになっていない)ことがよくわかります(写真4)。

写真4・当院での再治療開始時に採取した歯型模型

治療方針

上下顎ともスタンダードエッジワイズ装置(与五沢エッジワイズシステム)に切り替えて治療しました。
口元の改善は必要ない方でしたので、新たな抜歯はおこないませんでしたが、上顎第一大臼歯の欠損によるかみ合わせのずれ(下顎の第一大臼歯が上顎の第一大臼歯に対して著しく前方にある咬合状態)になることを伝え、了解を得てから治療を開始しました。

治療結果

写真5・当院での再治療後の口腔内写真・レントゲン

当院での治療は1年6か月で無事終了し、上下の歯のかみ合わせが良くなり、歯並びがきれいになりました。患者さんが不満を感じていたでこぼこやすき間がなくなり、自信を持って笑えるようになったと喜ばれています(写真5)。
パノラマレントゲンをみると下顎前歯の根尖部の歯根吸収が認められましたが、右側犬歯の歯根吸収は当院初診時と変化はほとんどありませんでした(パノラマレントゲンの円で囲んだ部分)。

上奥歯の溝(黒の線)と下奥歯の山(黒の線)のつながりがよくなり(黒のラインが直線的になり)、上下の歯がしっかりとかみ合うようになりました。(写真6)

現在は上下に保定装置をつけて保定観察しています。下顎の親知らずは抜歯する予定です。

写真6・当院での再治療後に採取した歯型模型

矯正治療のゴールは歯科医師によってこんなにも変わる!

今回のケースの問題点は、前医が考える<矯正治療のゴール>にあったように思います。

このサイトで何度も申し上げている通り、当院では歯をきちんと並べて、かみ合わせも見た目もきれいにすることが歯の矯正治療と考えています。かみ合わせが正しく機能し、美しい口元を<治療のゴール>として明確に定め、より美しく機能的な口元を目指して新しいかみ合わせを創造できてこそ矯正治療だ、という考え方です。
推測ですが、前医が考える<矯正治療のゴール>は、当院とは異なったものだったように思います。

チェックポイントから比較する矯正治療

アイウエオ矯正歯科医院が考える<ゴール>については当サイトの「治療計画と治療期間のお約束」というコンテンツでご紹介していますが、いくつかのチェックポイントについてどのように改善されたかを見比べてみてください。

かみ合わせが緊密になっているか?

かみ合わせが緊密になっているか?

下の歯2本に対して上の歯が1本の割合でしっかりと緊密にかみ合っているのが理想です。
当院初診時には犬歯が倒れてすき間ができていましたが、再治療によりきちんとかむようになりました。

歯の接点にズレがないか?

歯の接点にズレがないか?

隣り合う歯と歯の接点にズレがなく左右対称に連続して美しいアーチを描いているのが理想です。
再治療により上下ともにきれいなアーチになりました。

歯の根は平行に並んでいるか?

歯の根は平行に並んでいるか?

理想のかみ合わせを実現するためには、歯の根と根が近づき過ぎないように平行に並んでいる必要があります。
当院初診時には特に右下の犬歯が傾き平行が取れていませんでしたが、再治療できれいに平行に並びました。

これらはチェックポイントの一部ですが、<治療のゴール(最終目標)>を明確にすることの大切さがおわかりいただけたと思います。
Case 5でも説明した通り、治療のゴールに対する考え方は、治療を担当する歯科医師によって異なり、見極めが難しいことです。
治療を始める前に、きちんとした検査から導き出された<治療のゴール(最終目標)>と、その治療方法について納得できる説明をしてくれるかどうかが、矯正歯科医院選びの基準のひとつになると思います。

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