歯を抜かずに矯正治療を行ったが、 前歯と口元が出ているので治してほしい
再治療開始年齢:36歳3カ月
前医での治療:マルチブラケット装置(ストレートエッジワイス)を使う非抜歯治療
主訴:上下前歯と口元の突出で口が閉じられなくなった。顎関節の違和感、頭痛や目まい等の不定愁訴。
保定期間:現在も保定中(保定4年経過)※保定期間は通常2年~3年(状態により異なります)
通院回数:3~4週間に1回程度、保定期間は4~6か月に1回程度
治療費の総額の目安(自費):2期治療:総額約67万~92万円 保定観察料:3千円/1回
副作用・リスク:歯根吸収が起こるリスクがあります。矯正治療中は歯磨きしにくい部分ができるため虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。
※記載の治療費は治療当時の金額(税込)です。
2年も治療した結果、口も閉じれず、不信感が増大
一般歯科で叢生の改善のため非抜歯での歯列拡大矯正治療(上下顎マルチブラケット)を2年間受けた結果、口が閉じにくくなり、 治療に対する疑問を医師に伝えたところ、全て「後で微調整します」と言われたが、そのまま保定になった。
顎関節の違和感や頭痛、目まいが続き、不信に思ってセカンドオピニオンを求め、当院のホームページを見て受診された患者さんで 当院で抜歯して治療した症例です。
アイウエオ矯正歯科医院での治療
検査
両突歯列、叢生歯列弓。前方側方に拡大された上下顎歯列、上下顎切歯の唇側傾斜による口唇の突出感を改善し良好なプロファイルを獲得しました。
治療方針
大臼歯の整直を行い咬合を安定させることを目的に、上下顎両側第1小 臼歯を抜去し、スタンダードエッジワイズ装置にて再治療を行うことになりました。
治療経過
.018″×.025″ スタンダードエッジワイズ装置を装着し、ラウンドワイヤーを用いてレベリングを2カ月間行った後、パワーチェーンにて犬歯遠心移動を4カ月間行った(7 )。続いて上下顎角ワイヤーにVループを組み込み、上下顎前歯後退を8カ月間行う(8)。
その後、上下顎アイディアルアーチを用いて仕上げを12カ月間行った(妊娠出産のため5カ月間休止あり、9)。前歯後退時と再レベリング時に左Ⅱ級ゴム(4カ月)、仕上げ時にU&Dゴム(6カ月)を併用しました。
治療結果
主訴である上下顎前歯と口元の突出感を改善する目的で、上下顎両側第1小臼歯を抜去し、スタンダードエッジワイズ装置を用いて治療を行った。動的治療期間は2年3カ月(妊娠出産のため5カ月間休止あり)。側面セファログラムを重ね合わせると(13)、A点B点が後退し、上下顎切歯の舌側移動により上唇が後退し、良好なプロファイルが獲得できたことが分かります。
患者さんが顎間ゴムをきちんと掛けてくれていたため順調に治療が進み、臼歯関係アングルⅠ級の緊密な咬合が獲得できました。大臼歯の整直ができ、歯根の平行性は良好。歯根吸収に変化はありませんでした。。また顎関節の違和感は解消し患者さんは結果に大変満足されておりました。
考察・まとめ
本症例の問題は、前医での説明不足と曖昧な回答が不信感を増大させたものと考えられます。そこで、当院初診患者のうちセカンドオピニオン件数と転医件数を調査したところ、近年増加傾向で、矯正治療に対して不安や不信感を抱いている患者さんが多いことが分かりました。その不安のほとんどが、非抜歯矯正 によって前歯が突出してきたこと、拡大床装置で歯列拡大をしたが前歯が出てきた、あるいは噛めなくなってきた、というものです。
また、アンケート調査(当院への転医症例患者10人中9人が回答)を行いました。
質問1「患者ファーストの(早期)矯正治療に期待すること、必要なこと」
- 分かりやすい説明をしてほしい(治療を開始する時期や、今後の見通し、検査結果、メリット・デメリットなど)
- 正しい情報を発信してほしい(一般歯科と矯正専門の医院の違い。どこの歯科にかかったらいいのか分からない)
- 適切な治療が受けられる仕組みをつくってほしい(一般歯科と矯正専門歯科の連携、歯科矯正専門医の制度)
質問2「これから矯正治療を受けようとする方に伝えたいこと」
- 「近いから」「安いから」と安易に医院を決めない方がいい。何軒かの医院で相談を受けること
- 矯正治療を勧められたら、必ず他の矯正専門医に相談すること
- おかしいと感じたら、早い段階で専門医へセカンドオピニオンを求めに行くこと
今回のような転医症例は、患者さんに負担を強いることが多いですが、特に心のケアを慎重に行うことが重要だと強く感じました。